誰も「戦後」を覚えていない (文春新書)



誰も「戦後」を覚えていない (文春新書)
誰も「戦後」を覚えていない (文春新書)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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それでもまだ話しづらいこと

本書では疎開について触れていない。その理由はあとがきで明らかにされているが、著者にとっての疎開生活が、一生の中で最も幸福な一年と言えるものだったためである。この幸せな疎開生活については、恥ずかしく申し訳ない感じがして同窓会でも話せなかったとのことである。

本書を読んで一番引っかかったのは、この部分である。
忘れるべきでない記憶

人は誰も忘れたいどん底状態の記憶がある。しかもそのどん底が自分の努力でないことで
脱出できて大成功をおさめたらなおさらなかったことにしたいだろう。
ここでいう戦後とは日本にとってそんな時代。
当時の人にとっては当たり前すぎ、知らない人には想像もできない、そういう歴史は
残りにくいことを知っての執筆だろう。だから私には面白い記述が多い。
玉音放送は子供でもおおよその内容は理解できた、とか殺人的な買出し列車の様子は
当事者じゃないともう書けないだろう。
特に面白いのは美空ひばりを日本中がいじめてきたという記述。
彼女も考えてみれば早すぎた天才で死後名声を高めている不幸な人の一人という
意見は最初から彼女を見てきた人しか言えないだろう。
興味本位で読んでも十分に面白い内容が豊富な一冊。
現代日本の出発点

私は終戦後5年目の1950年生れ。戦争をくぐり抜けた老いたる親を亡くしつつある世代。本書を読んで、幼少の頃、まだ戦争体験が鮮やかだったであろう親(とくに母)から、断片的にではあるが生き生きと繰り返し聞かされていた話しが蘇った。
その母は昨年他界、父は脳梗塞を患いリハビリ中。母からもっともっと教訓を伝承してもらえなかったことを後悔すると同時に、残された父との残された時間の大事さを思った。
戦争によって日本はリセットされ、敵国との戦いが終わったあとの生活との闘いによって日本の復興がスタートした。敗戦によってそれまでの国が外国の手で構造改革され、その後の進路をアメリカに思いきり頼れたことをポジティブに、真摯に受け止めたいという気持ちにさせられた。
著者が放送ジャーナリズム出身であることが本書の迫力を増している。

知らなかった戦後の真実とは

この本は、どんどん記憶が遠のきつつある戦後のあの一時期、歴史の教科書などにはあまり載っていない日々の生活が、テーマごとにとてもわかりやすく説明されている。

銭湯での盗み行為、殺人的に混んでいた電車や買出しの手入れ、間借りと食料の不平等、そこから発生した懐疑と憎悪、闇市、預金封鎖、シベリヤ抑留…。

著者は、「不公平」こそが敗戦直後の基調音だったと言う。戦死した人、生き残った人、シベリヤに抑留された人、帰国した人、戦犯になった人、ならなかった人、闇で儲けた人、儲けなかった人、飢えている人とたらふく食べている人…。いつの世にも不公平はあるだろうが、この激動の時期は特にそうだったことだろう。

玉音放送についての項も、とても興味深い。戦後を知らない世代は一読の価値がある。




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